1346次 硬座で成都→蘭州
実は旅始まって以来のヤバイ状況下で日記を書いている。理由は後で分かる。さて、今日は蘭州への移動日だ。
昼前、驢友記青年旅舎(Mix Hostel)をチェックアウトして徒歩で成都駅へ向かう。1215頃、成都駅に到着する。成都駅前は公安の車両が待機している。
春運真っ只中なので駅前には武装警察がしっかり待機して周囲を警戒している。
待合室へ入ると既に人民で溢れて座る場所が無い。なので改札口で先頭を陣取って約3時間待つ。そして、やはりイベントフラグが立っていた様で他の列車に乗り遅れた人民と駅員の言い争いが2件発生する。
まあ、これは発車5分前までに改札口に辿り着けなかった人民が100%悪いのだが、難癖つけて駅員に改札口 開けるように怒鳴っている。でも、列車は発車してしまったのでどうしようもない。乗り遅れた人民は駅員に罵声を浴びせるが武警が警備しているので結局は追い払われていく。まあ、乗り遅れた人民の往生際が悪すぎる。
1500前に改札が始まりダッシュで列車に乗り込み荷物置き場を確保する。そして、予想はしていたが車内は身動きをとるのが困難なほどの大混雑になる。定刻通り1529に成都を発車して蘭州へ向かう。今回は非常に条件の悪い中での移動だ。
目の前に2歳ぐらいのガキがいる。目の前だけではない。周囲では既にガキ供の泣き声が聞こえている。今までの経験上だと近くにいるとガキの泣き声とかで不快指数が上昇して気分が悪くなる。おまけに春運で大混雑の車内だ。まあ、とにかく今は平常心を保って蘭州へ向かうしかない。
しかし、1時間、2時間と経過していくうちに新たな問題が発生した。ガキ以前に人民どもがサルばかりであった。窓からカップ麺の容器、ビール瓶などを投げ捨てる。床には痰を吐くし、ガキが小便をしたくなったらチンコにペットボトルを装着して放尿だ。夜になるとガキの夜鳴きで眠れない。色々な意味で危険な状態に陥っている。どうやら、自分は春運を甘く見ていた。
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
食費 | 5元 | |
合計 | 5元 |
蘭州到着
午前4時頃、ガキの夜鳴きで眠れない中で、とうとう予想していた事態が訪れた。気分が悪くなってきた。この場合は横になるのが一番なのだが座席下は既に人民、いやサルが寝ている。通路でもサルどもが寝ており場所が無い。とりあえず場所を探して車内を移動するが既に視界が狭くなり耳が聞こえなくなっている。
気力だけで動いて空間を見つけて横になるというか倒れた。もろに倒れるとサルどもが騒ぐので静かに倒れて回復を待つ。もちろん、通路で横になっているので汚染地域だ。何分横になっていたか分からないが耳が聞こえるようになって視界も元に戻った。でも、まだ気分悪い。横になっている間に自分の上をサルが跨いで行く。
とりあえず大丈夫そうになった所で立ち上がりトイレへ向かう。サルどもが寝ている時間帯なのでトイレは空いていた。トイレでサルが寝ていたらどうしようかと思ったが・・・。まあとにかく今、糞をしておかないと蘭州到着までトイレへ行ける機会はないだろう。糞を済ませて席へ戻り眠るように努力する。
1230頃、蘭州に到着する。ここからどうするかが問題なのだ。蘭州でラサ行きの切符を買うか、西寧まで移動してラサ行きの切符を買うかだ。
しかし、駅の切符売場では身分証確認があり入境証を持っていなれば無理だ。街中の代理販売所でも恐らく身分証確認はあるだろう。ダフ屋はぼったくり価格になりそうだし、それ以前に本物の切符かも怪しい。
今後の行動を考えながら出口へ向かうと地下通路の階段付近で駅員の「阿克斯・拉萨的乘客(アクス・ラサの客)」という掛け声が聞こえてきた。何かと思い駅員と人民の会話を聞くと何やら今日のアクス行きとラサ行きの切符が買えるらしい。10人ほどの人民たちに紛れて駅員に付いて行くと別の出口から外へ出る。
ラサ行きの切符購入
駅員に連れられ人民たちと一緒に何故か駅の切符売場ではなく路地を歩いて駅の旅館に連れて来られた。
そして、何故かここでアクスとラサ行きの切符が売られていたのだ。で、駅の旅館なのでダフ屋ではないのだが「何故こんな所で?」という疑問が湧くのだが人民たちはアクスとラサ行きの切符を購入している。
で、自分もラサ行きの切符を買おうとしたらラサ行きの人民だけ身分証確認していやがる。これでは入境証を持っていない自分は買えないではないか!とりあえず様子を窺って一番最後に「ラサ行きの切符ある?」と聞いてみたら「寝台の切符があるよ」との事で高いけど買うことにした。身分証確認があるかと思っていたら何故か確認無しで買えてしまった。
忘れていたのか?それとも、外人と分かっていたけど目の前の現金に負けて売ってしまったのか?とにかくラサ行きの切符が買えてしまった。おまけに荷物を無料で預かってもらい昼食に出かけることができた。他のラサ行きの人民たちも同じように荷物を預かってもらって昼食へ出かけたり空いている部屋で一眠りしている。もちろん無料でだ。
1430頃、ラサ行きの人民が全員戻って来て駅員に連れられてラサ行きの待合室へ行く。それにしても切符売場でなく何故駅の旅館でアクスとラサ行きだけの切符を売っているのだ?少し考えて幾つかの説が思いついた。
例えば自分が買ったラサ行き硬臥中段の切符は537元だ。これを切符売場で払い戻す際に端末は操作せずに通常通り払い戻し手数料20%(107元)差し引いて払い戻して切符を横流しする。額面通り売りさばけば払い戻し手数料20%の107元は駅員たちの小遣いに・・・。まあ、実際どういう仕組みになっているのかは訊いていないので謎だ。
入境証無しで乗車
さて、待合室に到着するが入口には武装警察が配置されておりヤバそうな雰囲気が漂うが入口の荷物検査は無事通過する。改札が始まるまでに30分ほどあり、 いつもなら改札口で先頭を陣取るのだが今日は控えめで真ん中あたりに並んで待つ。
しかし、後ろから公安の「身份证拿出来(身分証出して)」の声が聞こえてきた。状況が非常に緊迫してきた。いきなり逃げると余計に怪しまれるので声を掛けられるまで知らん顔しつつ逃げ場所を探す。こちらが心拍数急上昇の中で公安が素通りしていく。
公安の行動を窺うと、どうやら中年のおっさんばかりを狙って身分証確認をしている。しかも、無線で名前の照会をするほどの念の入れようだ。そして、見た目で漢族のおっちゃんばかりが身分証確認の標的でチベット族や回族の身分証確認は無い。どうやらチベットがらみでの身分証確認では無さそうだ。
何とか危機は去り改札口が開くのを待つが今度は改札口で駅員が「票拿出来、身份证拿出来(切符出して、身分証出して)」の声が聞こえてきた。やはり、身分証確認は避けられないようだ。改札が始まり改札口に近づいていくと切符と身分証確認は無くそのままホームへ行けてしまった。乗客が多くて面倒で止めたのか?とにかく改札口は突破した。
T27次 硬臥で蘭州→ラサ
ホームへ出るとT27次が停車している。乗車する時は切符の確認だけで全く問題は無かった。
そういえばラサ行きの列車に乗車する時は健康カード(旅客健康 登记卡)を提出しなければいけないみたいだが要求もされなかったし提出もしていないな。
乗車して定刻通り1521に列車が発車すると乗務員が切符を換票証と交換に来た。寝台の場合は乗車すると切符を換票証と交換して下車駅が近くなると乗務員が換票証を切符と交換してくれる。この時、もし寝ていても叩き起こされるので寝過ごす心配は無いのだ。
列車はラサへ向けて走り出し次の停車駅は西寧だ。西寧を過ぎれば青蔵鉄道の区間に入る。列車には乗車できたがまだ油断はできない。しかし、既に問題が発生していた。自分は中段の寝台なのだが姉ちゃんに占領されている。文句を言ったら「上段が空いている」とかほざいてくる。上段は中段より料金が安いのだが・・・。
通常の状況なら換票証を見せて正当な権利を実力行使するのだが、今は問題を悪化させて乗警にも来られたら非常に困るので「大事の前の小事」という事で引き下がる。西寧を過ぎて夜になった。一眠りしようかと思ったが硬臥の上段は下から何をしているかよく分からないというのに気がついた。
そこで、車内で日記を書く事にしたのだ。西寧を過ぎてから何度か車内放送で寝台に空きがある事を告げており、どうやら春運期間中といってもラサ行きの列車は西寧からは空いており切符が買いやすくなっているようだ。硬臥や軟臥は旅行会社が買占めていると思っていたが冬の閑散期とチベット騒乱後の外国人への規制が厳しくなって売れ残りが発生しているのか?
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
食費 | 3.5元 | |
鉄道 | 537元 | 硬臥 蘭州→ラサ |
合計 | 540.5元 |
タングラ峠を越えてチベットへ
0830頃、目が覚めた。外の状況からしてゴルムドを通過していたようだ。ゴルムドを通過したので何だかラサに行けそうな気がしてきた。という事で、自粛気味であるが車内探検を開始する。
ラサ行きの列車という事で車内にはチベット語の表記も見受けられる。そして、ラサ行きの列車に使用されている車両は25Tになりカナダのボンバルディアと中国南方客車の2種類がある。最高速度は160km/hで、海抜5000m以上のタングラ峠を越えるので車内の気圧を保つために航空機と同じ与圧装置が装備されている。
更に環境に配慮した設計になっておりトイレは垂れ流し式でなくタンク式になっている。因みにトイレの窓は少し開けられるようになっており与圧装置の意味があるか少々疑問だ。
それと給湯器がカップ麺の容器を置く事を前提に作られているようで水筒は置き難い。
タングラ峠へ向かう途中ではチベットカモシカを見る事が出来たが旅行会社のHPに出ているようなチベットカモシカの大群に遭遇する事は無かった。
まあ、現実はそんなものだろう。それに旅行会社は派手に宣伝しないとツアー客が集まらないだろうし・・・。昼頃、タングラ峠を越えてチベット自治区へ入るが世界一高い場所にある唐古拉駅(海抜5068m)には停車せずいつの間にか次の扎加藏布を通過していた。
ラサには2000到着なのでまだ8時間の乗り鉄という事になる。この8時間は長い。硬臥の乗車率は半分以下なので動き回ると目立つので大人しくしているが、列車に旅行会社の人間が乗車しており「ホテルは予約しているか?」「ガイドは要らないか?」とか訊いてきたりするのでヘマしないように追い払うのが大変だ。
ラサ到着
1950頃、ラサに到着する。定刻より10分ほど早く到着した。
駅の外にはシガツェや山南、八一への車が待機しており客引きが多い。
自分はラサ市内へ行くので客引きを無視してバス乗り場で89路のバスに乗車する。とりあえず終点の公交公司まで乗りGPSを頼りに徒歩で拉薩東措国際青年旅舎を目指す。GPSだと1km弱なのでそれほど遠くないが、1つ手前のバス停で降りていた方が近かったようだ。
拉薩東措国際青年旅舎がある北京東路へ出て周囲を確認しながら歩くとバックパッカーの溜まり場であるバナクショー・ホテル(八郎学旅馆)を見つける。バナクショー・ホテルの近くにあるはずなので すぐそこのようだ。
2100頃、拉薩東措国際青年旅舎に到着。ドミトリーは空いていたのだが料金表見ると会員でもなくても15元になっていた。面倒で会員でも非会員でも同じ料金にしてしまったのか?まあ、とりあえず3泊する事にするが登記する際に入境証があるか聞かれたが「听不懂」を連発して乗り切る。
賓館によっては入境証が無いと宿泊拒否があると聞いていたがユースホステルは大丈夫なようだ。で、部屋は12人ドミで日本人が1人いた。A先生はダラムサラでチベット語を勉強したそうでチベット語が話せるそうだ。A先生も入境証なしでラサに来たそうだがラサの公安は1週間しかビザ延長してくれないそうでビザ期限5日前に公安へ行っても西寧とかで延長するように言われて追い返されるそうだ。
通常ならビザ期限5日前から延長手続が出来るがラサは大人の事情で違うようだ。おまけにビザ期限当日を狙ってラサの公安で延長すると申請日から1週間延長でも2日後受取りなので実質5日延長になってしまうようだ。しかも、しっかり160元取られるとの事。
それに何時規定が変わって延長不可になるか分からないから、これならゴルムドか西寧で延長したほうがいいな。A先生はラサには何度か訪れた事があるようで近くに安い食堂があるか聞いたら、近くのチベット族の店にあるという事で連れて行ってもらう。チベット族の店でトゥクパを食べるがこれがなかなか美味しい。そして、A先生はおばちゃんと普通にチベット語で会話している。凄すぎる!
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
食費 | 4元 | |
宿泊費 | 45元 | 1泊15元×3 |
バス | 1元 | 路線バス |
合計 | 51元 |